システムエンジニア(SE)の派遣契約と請負契約における問題点と今後

システム開発業界にはSESという業態があります。これはSystem Engineering Serviceの略称で、システムエンジニアには顧客先で働いてもらい、その対価として顧客からお金を頂く契約形態です。
SES系のシステム開発会社は雇用したエンジニアをお客様に紹介し、OKを貰ったら月々○○万円を頂くビジネスモデルなので、ザックリ言えば人材派遣会社と同じような仕組みです。
ただ、SESの場合は大きく3つの契約形態があります。これが少し複雑で分かりづらいですが、間違った認識を持ったままエンジニアに指示を出して取り組んでしまうと、法律違反になってしまう可能性がありますので、それぞれの契約形態はしっかりと理解しておきましょう。実際に契約に違反したる企業は4か月の業務停止命令を受けています。

それではさっそく説明していきますが、SES契約には主に派遣契約と業務委託契約(請負契約、準委任契約)があります。それぞれ特徴や指示系統が異なるため1つずつ丁寧に理解してください。

派遣契約

派遣契約は、エンジニアをお客様先に派遣して、お客様先でシステム開発を行います。派遣契約ではお客様先に労働者(エンジニア)を派遣することで対価を頂いているので、成果物のようなもの(プログラムの完成など)は、求められません。一定の労働時間を条件に契約がなされるのが派遣契約です。

例えば、ある金融システム開発プロジェクトAが始まって、その納期が3か月後だった時、派遣契約で働いているエンジニアは納期に間に合わせる責任は負っていません。(とはいっても普通は間に合わせるように頑張りますが)
納期に間に合わなくても問題はないのです。しかし一方で一定の労働時間を条件に契約されているため、早く業務を終わらせても、一定時間は働かないといけないので、エンジニアは効率的に働いても報酬が増えるわけではありません。

このような事情からお客様は優秀なエンジニアを派遣で契約してもらうことを望み、SES系開発会社は、経験の乏しい自社エンジニアを派遣することを望みます。

お客様にすれば同じ労働時間で優秀なエンジニアに生産的に開発してもらった方が良いですよね。でもSES系開発会社にすれば、優秀な自社エンジニアを派遣しようが、経験の乏しい自社エンジニアを派遣しようが拘束される労働時間が同様なら経験の乏しい自社エンジニアを派遣した方が売上効率を考えるとメリットがあります。

ちなみに派遣契約は、お客様の社員がエンジニアに直接指示を出せるので、お客様の社員がPM(プロジェクトマネージャー)となってプロジェクトを進めていけます。お客様の社員が指示できるので、急な割り込み業務が入ってきたときでも自由にエンジニアを動かせます。また一定時間以上は労働してもらう契約なので、的確な指示を出して、早く業務を終わらせれば、新たな業務を割り振ることができます。

派遣契約はSESの中で最も多い契約形態ですが、派遣契約の中でも2つのタイプがあります。一般派遣契約と特定派遣契約です。エンジニアをお客様に派遣する時は特定派遣契約が、常態化していたのですが、2018年度秋からはこの特定派遣契約が廃止されるという大改革が行われました。

一般派遣契約

一般派遣契約は、労働者が派遣会社に登録をして、派遣会社が労働力を必要とする特定の会社に労働者を派遣する契約です。一般派遣契約はあらゆる業種を対象としている点が大きな特徴で、高い技術力を必要とする会社からあまり技術力を求められない会社まで幅広い企業に派遣します。
一般派遣契約は契約上限が3年という縛りがあります。つまり、3年以上は同じ会社に派遣できません。
これは労働者を守るために国が考えたルールだと思います。「3年以上派遣を受け入れるなら、その方と雇用契約を結びなさいよ」という意図があってこのルールが制定されたと個人的に思っています。
お客様からすれば、正規雇用契約で労働力を確保するよりも派遣契約で労働力を確保した方が何かと便利(正規雇用契約だとかんたんに契約終了ができないが、派遣契約だと仕事がなくなれば契約終了ができる)ですからね。

特定派遣契約

特定派遣契約は、労働者が派遣会社と正規雇用契約を結んだ後に労働力を必要とする派遣先に派遣する契約です。あらゆる業種を対象とする一般派遣契約に対して、特定派遣契約はシステムエンジニアなどの専門性の高い業種が利用していた派遣形態です。(2度言います。利用していた派遣契約です。)

派遣期限は原則無期限でした。エンジニア業は高いノウハウを必要とするため、お客様もできるだけ長く業務に携わってほしいという想いがあるでしょうし、SES系システム開発会社も安定的に売上が入ってくるので、双方にとってメリットのある契約です。

しかし、全体の労働バランスを考える国にとってはあまり好ましくない契約です。正社員雇用率アップを求める世論を考慮すると「無期限派遣は派遣契約ではない」という結論に至って、この特定派遣契約は平成27年に廃止となりました。ただ、すぐに完全廃止はできないので、3年の移行期間を待って、平成30年9月29日に完全廃止となりました。

特定派遣契約廃止後は淘汰が加速する

特定派遣契約が廃止された後は、間違いなくSES系システム開発会社の淘汰が加速します。
特定派遣契約が廃止された後は一般派遣契約をもとにエンジニアを派遣することになると思いますが、一般派遣契約を行うためには一般派遣許可事業の認可を取得する必要があります。そして、取得するためには一定の資産要件を満たす必要があります。

・資産から負債を引いた額が2,000万円以上あること
・資産のうち、現金が1,500万円以上あること
・資産から負債を引いた金額が負債の7分の1以上あること

いかがでしょうか。
かなり厳しい条件となっています。小さい会社ではこの要件をクリアできません。
特定派遣契約を行うには届出だけでよかったのですが、一般派遣契約を行うにはこのように厳しい条件をクリアした会社でなければなりません。
今まで特定派遣契約で売上を上げていた企業は、準委任契約や請負契約(後述します)でシステム開発案件を受注しないと生き残っていけません。
特定派遣契約をメイン事業にしてきたSES系システム開発会社は大転換点を迎えています。

準委任契約

準委任契約は大きくは派遣契約と同じでお客様先に労働者(エンジニア)を派遣することで対価を頂く契約です。成果物のようなもの(プログラムの完成など)は、求められません。準委任契約は基本的に2名以上のエンジニアがチームで開発をするために行われますので、1人のエンジニアのみで準委任契約を行うのはルール違反になります。準委任契約ではお客様先の社員が準委任契約を結んだエンジニア全員に指示を出せず、お客様先の社員は窓口となるエンジニア(リーダークラス)のみに作業指示を出します。そして、そのリーダークラスエンジニアが他のエンジニアに作業を割り振ります。お客様先の社員は、窓口エンジニア以外に指示を出すと違反になります。

請負契約

請負契約は成果物に対して、対価を頂く契約です。そのため合意した成果物を期限内に納めなければなりません。これが派遣契約や準委任契約と大きく異なる点です。
しかしながら決まった労働時間を提供する必要がないため、20日かかるプログラムを10日で完成させれば残りの10日間は何をやっても自由です。(遊んでいてもいいのです。)しかし、逆に期限内に終わらなければ、契約不履行になるため徹夜をしてでも終わらせなければいけません。
SES系開発企業にとっては、優秀なエンジニアを請負契約で開発に従事させた方がメリットが大きいです。20日かかるプログラム分の対価を頂いて、実際は10日で終わらせればその分利益が残ります。

請負契約や準委任契約をしたい受注者

上述しましたg、派遣契約は業務指示を出せるのはお客様ですが、請負契約や準委任契約では受注者側が指示を出せます。そのため業務委託契約では、受注者のコストや意思により、自由にリソース追加や進捗の組み立てが可能になります。もちろん守るべきルールはありますが、業務過程はお客様から管理されません。
そのため、新人の現場を選ぶ際はリーダークラスエンジニアとセットで準委任契約や請負契約を締結してくれるお客様が最適です。
経験豊富なリーダークラスを1名と新人数名でチームを組んで開発を行えば、新人は開発経験を積めるし、最悪の場合でもリーダークラスのエンジニアが尻拭いをしてくれるからです。

エンジニア契約における問題点

エンジニアのSES契約はそれぞれルールが細かく縛りがあります。。さらに最近まではそのルールすら曖昧で、かつ外部に情報が漏れないため、ルール違反を犯しているにもかかわらず、それが公になっていませんでした。ルール違反だとは分からず行っている事業者もいるみたいです。
しかし近頃の行政はエンジニアのSES調査に本腰を入れている印象があります。そのため今後は様々なSES系システム開発会社が摘発を食らって、程度によってそれぞれ罰則を食らうでしょう。ちなみに過去良く発生していた契約違反の代表例は二重派遣契約と偽装請負です。

二重派遣契約

派遣契約で二重派遣契約は禁じられています。二重派遣とはお客様(仮にA社)と自社エンジニアが派遣契約を結び、さらにお客様(A社)がエンジニアを自社(A社)のエンジニアと偽って、お客様(B社)と契約を結ぶ形態のことです。これは二重派遣契約となり、大きな罰則になります。場合によっては数か月の業務停止命令になります。

例えばB社がA社に対して、「新しく契約するエンジニアはA社の正社員じゃやないとダメ」という条件の場合、A社は自社のエンジニアを探さなければいけません。しかし、自社エンジニアが不足していたらどうしようもできない。
そんな時に別会社のエンジニアを自社エンジニアと偽ってB社と契約するのです。
明らかに違反行為で、見つかると重い罰則が待ち受けています。

偽装請負

偽装請負とは請負契約、もしくは準委任契約を結んでいるのに、実際は派遣契約と変わりない行為を言います・
例えばX社がY社のエンジニア1名と準委任契約を結んでいたとします。しかし、準委任契約は基本的にチーム開発で行う契約ですが、1名です。Y社のエンジニアは窓口なので、X社の社員からは指示を受けられますが、そこから他に業務指示を出すエンジニアはいません。これは結局、派遣契約と何ら変わりません。
このように実際は派遣契約でありながら請負契約のように装う行為を偽装請負と言います。こちらも罰則の対象となります。

今後の展開

二重派遣や偽装請負は昔から存在していたようですが、明らかな違法行為です。平成30年10月1日より特定派遣契約が完全禁止になったように、労働に関する契約は今後も厳しくなるでしょう。どちらかといえば労働者を守るために厳しくなっている節がありますので、労働者にとってはメリットがありますが、今までなんとなく特定派遣契約で食いつないできたSES系システム開発会社には大きな壁となるでしょう。もしそうなりたくないSES系システム会社は早くに一般派遣許可事業の認可を取ってください。

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